香りマーケティングのブランディング効果と企業の事例
視覚や聴覚以外に行う企業戦略に「香りマーケティング」があります。これは香りマーケティング協会によって定義づけられたもので、香りの活用で消費者の購買意欲や満足度向上に深い印象を与えるマーケティング手法です。
近年、多くの企業が香りマーケティングを取り入れることで顧客満足度の向上や、販売促進を図っています。適切な香りを使用することで、消費者の感情や記憶を刺激し、ブランドイメージや商品の価値を高めることができます。
チラシやショップカードなど従来の基本的な広告に新たな価値を見出すものとして注目されています。会社や店舗のイメージに合わせて香りを開発する、ブランドセントという概念も生まれました。
嗅覚に訴えることで購買意欲や好印象を得るのが香りマーケティングです。
香りマーケティングの効果
香りマーケティングは、消費者の購買意欲やブランド認知を高めるために、香りを戦略的に活用する手法です。香りは感情や記憶と密接に関連しているため、効果的な香りマーケティングは顧客満足度や長期的なロイヤリティを向上させる可能性があります。
ブランド認知の向上
香りは独自の個性を持ち、特定のブランドや製品と連携させることで、消費者が容易にそのブランドを認識できるようになります。これにより、ブランドロイヤリティの向上やリピート購入の促進につながります。商品やサービスを香りと共に顧客が思い出せるように、調香師と共に香りを開発しています。
匂いと一緒に記憶した映像や感情を呼び起こされる現象がプルースト効果です。商品と匂いを印象付け、香りで自然に商品を思い出してもらいます。
購買意欲の喚起
心地よい香りは消費者の感情に働きかけ、購買意欲を高めます。例えば
食品販売店で焼きたてのパンの香りを漂わせることで、食欲を刺激し購入を促すことができます。
化粧品における香りと美しさへの高揚感は、プルースト効果による購買意欲の高まりだといえるでしょう。
滞在時間の延長
良い香りが漂う空間は、消費者が店内に長く滞在し、商品をじっくり見ることを助けます。これにより、商品への関心が高まり、購入確率が上がることが期待されます。
顧客満足度の向上
香りは、消費者の感情やストレス緩和にも効果があります。リラックス効果のある香りを店内に取り入れることで、顧客満足度が向上し、リピーターの増加につながります。
明治学院大学は店舗に2種類の香りを置き滞在時間や購買意欲を調査するという実験を行いました。その結果、香りは顧客満足体験に繋がることが明らかになっています。
使う側にも香りの効果
企業で働く側にとっても香りマーケティングはよい効果を得られる可能性があります。
嗅覚への快適な刺激は、働く側の高い意欲やリラックスを得るのにも利用できます。
印刷物への香り付けも企業イメージアップにおすすめです。
業界事例
香りマーケティングの業界事例としては、以下のようなものがあります。
ホテル業界
多くの高級ホテルでは、ロビーや客室で独自の香りを演出することで、お客様に快適な滞在を提供し、ブランドイメージの向上を図っています。香りは記憶に強く残り、お客様が再訪時にその香りを感じることで、ホテルへの親近感が生まれます。
小売業界
アパレルや家電量販店など、小売業界でも香りマーケティングが活用されています。
店舗内に特定の香りを演出することで、消費者のショッピング体験を向上させ、購買意欲を刺激する効果があります。
自動車界
新車販売の際に独自の香りを車内に噴射し、購入者に快適なイメージを与えることで、販売促進を図ります。
市場規模
香りマーケティングの市場規模は、2019年には約3,000億円と推定されています。世界的にも急速に成長が見込まれており、2025年には6,000億円を超えると予測されています。
これは、香りが持つ心理的効果や消費者の購買行動への影響が評価され、多くの企業が興味を持っていることが背景にあると考えられます。
企業事例
サジェント・アロマティックス
香りマーケティングの先駆者企業であり、世界中の多くのブランドに香りマーケティングのソリューションを提供しています。
オーガニック・アロマセラピー
オーガニックや天然素材にこだわった香りマーケティング商品を企業に提供しています。
エアローム
オリジナルの香りやディフューザーを製作し、企業のブランドイメージ向上や顧客満足度向上に寄与しています。
すみだ水族館
成功例として挙げられるのがすみだ水族館です。大人の空間演出のために科学的なデータに基づき、各ゾーンに時間に合わせたアロマで演出を行っています。
KAORIUM
香りという「あいまいな存在」を言語化できるKAORIUM(カオリウム)は、好みのお酒やフレグランスの探す手間が省けるといったメリットを持つAIシステムです。
新宿と銀座のNOSE SHOPでは、好きな香りを選ぶためのサポートツールとして実験的な導入を行い期間中の買上率が287%向上しました。
エレメンツ社労士事務所
香り成分を閉じ込めたカプセル含有のインキにより、名刺から匂いがでる仕組みの香り印刷の名刺を使用しています。
HUGO BOSS(ヒューゴボス)
世界的ファッションブランドとして、店内にオリジナルフレグランスの香りを漂わせ、エレガントでクラシックなイメージを顧客に抱かせています。
日産自動車
香りマーケティングを行っている企業と初めて提携を結んだ世界的に有名な大手自動車会社です。柑橘系の香りとグリーンティーの香りに、カルダモン・タイム・ドライウッドを調合した日本独自の文化を融合させたオリジナルの香りを作りました。
まとめです
香りは従来の広告をより印象付ける戦略として、大きな可能性を秘めています。これまで意識してこなかった香りは記憶に残り、感情に訴えかける効果が高いとの認識も広まる他、一定の効果も得始めています。
使用感や居心地の良さをアップさせる香りマーケティングは確かな戦略の元で行うことによって、かなり影響力のある広告となります。香りマーケティングによるブランドセントはこれからも注目を浴びるようになるでしょう。
(この記事は2006年に掲載した記事を2015年と2023年に加筆修正更新したものです)
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