ニューロマーケティング (Neuro Marketing)
ニューロマーケティング (Neuro Marketing)とは、脳科学の分野から消費者心理や行動を解き明かし、マーケティング活動に応用しようとする試みです。
ニューロマーケティングはニューロ(neuro)=脳、神経、神経組織とマーケティングを組み合わせた造語で、オランダ・エラスムス大学のエール・スミス教授の造語です。
ニューロマーケティングが誕生してまだ20年あまりですが、有名ブランドでもこれを専門に扱うセクションが設置されるなど、新しい時代のマーケティング手法として注目されています。
ニューロマーケティングで何がわかるのか
ニューロマーケティングには、消費者がなぜその商品を選ぶのかという視点においてその理由を言語化する前の「脳科学」で解き明かそうとする狙いがあります。
ニューロマーケティングでは安いから、気に入っているから、デザインがいいからといった「言語化」された心情以前に、どんな脳の動きが商品購入のトリガーかを科学的に解き明かすことで、言語化される前の感情を可視化し、マーケティング上で分析可能にします。
それまではアンケートやインタビューを行い「商品を選ぶ理由」を言語化された情報でしか取得できなかったものが、脳の動きに注目することで潜在的かつ無意識的な行動を把握し、感情の変化を定量化して、客観的な指標として観察できるようになったわけです。
ニューロマーケティングのメリットと問題点
ニューロマーケティングでは、以下の3つのメリットがあります。
- 消費者の忖度なしの「本音」を引き出せる
- 商品を選ぶ際の意思決定のプロセスを「数値化」して把握できる
- 脳波データの取得によって「時系列」で感情の変化を追跡できる
消費者の言葉に現れない感情の動きを分析できれば、アンケートなどでは知りえなかった「本音」を引き出せるでしょう。
また購入に至るまでの無意識の意思決定プロセスを把握でき、脳の活動をデータ化、客観的な数値として記録し、マーケティング活動に生かすこともできます。
消費者の感情がどう変化しているか、何がトリガーになっているかの部分まで把握できれば、マーケティングを進める上で有用な情報を増やすことにもつながります。
ニューロマーケティングで利用される3つの指標
ニューロマーケティングでは「生理指標」「行動指標」「主観指標」の3つの指標をもとに分析を行います。
生理指標
生理指標では個人の意識や意思などと無関係の無意識の情報を取得します。
生理指標は具体的に脳波、心拍、電圧、唾液、皮膚から得られる情報です。
例えば脳波であればMRIなどの装置を使って気分注意、記憶、作業負荷などのデータを取得。
心拍では興奮状態にあるのか、ストレスを受けているか、リラックスしているかといった情報を取得します。
皮膚からは皮膚電気反応から緊張状態にある、ストレスを受けている、驚いているなどの情報を得ます。
行動指標
行動指標は心の変化の定量化把握を目的とします。
例えば認知や評定課題におけるその反応時間、正答率から行動パフォーマンスを定量化したり、視線の動き(アイトラッキング)や視線の滞留時間を測定し、無意識の行動における変化を測定する、行動コーティングを行います。
主観指標
主観指標はこれまでもマーケティングで用いられてきたアンケートやインタビューなどで、被験者の気持ちを把握します。
ニューロマーケティングではこの主観指標に加えて、ほかの指標で得られたデータをふまえ多角的に分析するために行います。
まとめ
ニューロマーケティングはブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)などの導入や、脳科学分野の発展とともにより今後も広く用いられることが予想されます。
とはいえ無意識下の情報を収集しようとする点においても、解明されていない部分が多い脳機能へのアプローチにおいても、障壁が多い分野であると言わざるを得ないことから、その導入には十分な検討が必要です。
(この記事は2014年に掲載した記事を2015年と2022年に加筆修正更新したものです)
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